『これ何てネトゲ?』〜FF12レビュー〜

ファイナルファンタジーXIIのレビューです。100時間以上掛けてエンディングを見て、200時間近く掛かってほぼ全ての要素をやり尽くした上でのレビューですので、ストーリー的な内容を含むエンディングを見た人向けのレビューとなっています。という事で、












ファイナルファンタジーXII(特典無し)

ファイナルファンタジーXII(特典無し)

いきなり批判から入りますが、これ開発途中の松野氏降板に絡んでにスクエニ社内でゴタゴタあったでしょ、絶対。
中盤までの絶妙なゲームバランスやストーリー展開が、後半〜ラスボス〜エンディングまでグデングデン。きちんとまとめ上げていればシリーズ屈指の名作とも成り得ただろうに、残念至極。

以下、要素ごとにまとめます。

グラフィックについて
まともなモニターで見るとハイビジョンに勝るとも劣らない美しさ。細部の作りこみや被写界深度を意識したカメラワークなどムービーシーンは「見事」の一言。通常のゲーム内でも町並みやダンジョンなどはこれでもかと作りこまれ、ムービーシーンと比較した通常画面の“がっかり感”はかなり少なくなっています。改めて同社の技術力の高さとリソースの豊富さを思い知りました。召喚ライセンスとか「もっとじっくり見たいのに!」と残念に思わせてくれるのも凄いというか。
ただ、綺麗過ぎるが故に“ゲーム”としての記号性が薄れ、やや雑多な印象を受けるのも事実。街中など、「ストーリーと関係の無い“一般人”が多数生活しているんだ」という空気感の演出には一役買っていますが、歩ける場所や話しかけられるキャラを探すために結局は画面右上のミニマップを見る時間の方が長かったり……このあたりのバランス調整は今後のゲーム開発において当分課題であり続けるでしょうが、FF12は比較的良くバランスされていると思います。
“世界観”について別項目を設けようかとも思ったんですが、FFは“ファンタジー”であるからして「そういうもんだ」と受け入れてしまえば良いのかなと。ただ、あからさまに“スターウォーズ”の匂いがするのはちょっとどうかと(笑)あとはストーリーの項目で。
ストーリーについて
“戦争”を真正面から扱っている所がやはりオウガバトルFFT、ベイグラントを手がけた氏の作品だなと。つーかFFTFFTA)の過去だって発言もしてますしね。(実はオウガバトル以外未プレイなのでこのあたりに言及するのは避けます。プレイしておけばキャラとか色々楽しめたっぽいので、ちょい残念。つーか松野氏の作品はどれもこれも高評価なので死ぬまでにはプレイしておきたい所)
最初にも書きましたが中盤までのストーリーは秀逸。
2つの大国に挟まれる小国、恐れていた戦争の勃発と、その最中最愛の人が悲運の矢に倒れ、また父である国王が謀殺されるという運命に翻弄される王女。名を変え地下に潜み、レジスタンスのリーダーとして国を取り戻そうと行動する矢先に一人の少年と出会い、再び運命の歯車が回りだす……
と、普通に考えればこの流れで主人公=アーシェとなるはずが建前はヴァンが主人公。それでも序盤は「やる気だけはある無鉄砲な若者が、少しの偶然に助けられながら周囲の状況を加速させていく」というお約束の展開でトリックスター型の主人公としては申し分ない感じなのですが、兄の死について誤解も解け気持ちの整理がついてしまった事、「国を取り戻す」という発言の重さが子供のそれであり、本当に重い覚悟で行動しているアーシェに“負ける”などしてモチベーションが低下。再び単なるお子様にランクダウンしてしまいます。
それはそれで上手くアーシェが主軸の話にバトンタッチできれば良かったのですが、王女様は相変わらず周囲の状況に流されがちでイマイチ話の主導権を握れないうちに物語のキーアイテムである破魔石やドクター・シドと絡んでバルフレアが大きくクローズアップされてしまい、さらに“神”気取りの変な奴等まで出てくるは、肝心の繭壊す場面はジジイに見せ場持っていかれるは、そもそも初代レイスウォール王って何考えてたのよ?とか言ってるうちにラストバトルに。
そのラスボスの格好悪さは歴代トップ(´Д`)何あのマッチョ。てっきりヴェーネスと合体するとか、「お前ら人間なんか大人しく言う事聞いていればいいんだよゴルァ!」とか言いながらオキューリア達が出てくるとかを期待してたんだけどなぁ……あと、円形のフィールドの周りをグルグル回るラスボスってPSOを思い出さずには居られなかったですじゃよ。
っと、ストーリーの話だった。もう一気にエンディングの話までしてしまいますが、バルフレアとアーシェがくっつくのが全く理解できない。チューバッカ……じゃなっかった、フランと一緒に居ればいいじゃん。何もこんなところまでスターウォーズにしなくても。アーシェは亡き夫の面影が重なるヴァンの事が気になり、でもヴァンはアホなのでそれに気付かず、アホヴァンの煮え切らない態度に業を煮やしたパンネロの元にラーサーが求愛……というのが“お約束”って奴じゃないのか!?
えー、真面目な話をすればバッシュの視点で話を組みなおすのが松野氏亡き後の(死んでない)一番ましなまとめ方だったんじゃないかなーと。実際に今回の話の「軸」がバッシュ中心なんだし。本来はアーシェとバルフレアの絡みとかパンネロの出番とかヴァンがDQNから脱却するところとか、もっと色々あったのかもしれないけど現状だとそれぐらいしか手が無さそう。しかしつくづく松野さーん・゚・(ノД`)・゚・。
戦闘について
ライセンスシステムの評判が悪いみたいですが、ジョブだのマテリアだのジャンクションだのスフィア板だのの流れだとまぁこんなもんかなと。
それより武器防具のバランスが著しく悪いのが気になりました。中盤までは比較的リニアに努力の量と手に入る武器防具とその強さが比例してたのに、後半は10レベルぐらい上がっても殆ど強くならない、お使いをこなしてもろくな物がもらえない、かと言ってザコ戦を魔法に頼ろうとするとMP足りなくなり、50時間位レベル上げしてもちょっと先のエリアに行けばボコボコにされ強くなった実感なし。ストーリー進めないと店の品揃え良くならないのでとりあえず先に進めるとお使いで貰えるアイテムがさらにゴミと化し、どうにか頑張って頑張って、死ぬほど苦労して最強武器を手に入れた頃にはラスボスなんぞ瞬殺可能、しかもその最強武器が両手持ちの武器ばかりで盾の存在意義が非常に薄い(片手持ちの最強武器と実効ダメージが倍近く違うのでわざわざ盾を装備する気にならない)のも気に食わない。あ、あと両手持ちじゃなくて二刀流が存在しないもの気に食わない。ジャッジの皆は二刀流してるじゃーん(´Д`)
ここでふと思い返してみると、魔法については実はかなりバランス取れてたんじゃないかと。回復魔法、補助系魔法、ステータス系魔法、攻撃魔法何れも悪い印象無いな。逆に目玉システムのミストナックは序盤こそ対ボス用として重宝するが、中盤以降は単なるMP増加剤に成り下がり使用されなくなるのが残念。消費アイテムを消費できない貧乏性なのでMP無くなる=回復できなくなるというプレイスタイルのせいかもしれんがw
さらに召喚獣に至ってはそもそもの攻撃力がそんなに強くない上に、召んだ瞬間に発動してくれないので“召喚→ボコられる→帰っていく”って何しに来たんだゴルァ!(゚Д゚)と言いたくなる有様。ザコ相手に1度ずつ演出見てあとはお蔵入りですよ。そもそも世界の果てまで寄り道しないと強いの手に入らないし、今回召喚獣は完全におまけっぽいなー。
そもそも中途半端に動き回れるぐらいならアクションゲームにしてくれたほうが良かった。でもそれやっちゃうとPSOになっちゃうか(笑)
結局は通常攻撃を強化して、補助や回復のガンビット設定して放置というプレイスタイルに落ち着くわけですが、これってつまりbot?寝マクロとか組めませんかそうですか。時間感覚とかアイテム入手についてとか、非常に“悪い意味でネトゲっぽい”のがFF12の駄目な所だと思います。シームレスで戦闘に入る事自体は面白いと思ったけど、これも要はMMORPGの手法なんだよなぁ。当初ネトゲとして開発されてたってのは本当なのかなと思ってみたり。そいえばFF10の時に「スタンドアロンのFFは10が最後、あとはオンラインになっちゃうよ」って誰かが発言してたような。
……なんだかネガティブな内容ばかりなのでポジティブな内容も(笑)
シームレスなフィールドを生かして、雑魚敵の中にとんでもなく強いのが混じってるという配置はなかなか面白かった。ゲームを始めてすぐの場所にそこらのボスより強い恐竜が歩いてたり、殺されさえしなければ(実際には無理だけど)LV1でも世界の果てまで歩いていけるという感覚も良い。ネズミなど小型の敵から見上げるほど大きな敵、空を飛んでいて実際に近接武器だと手が届かない敵など3Dである事をふんだんに生かした戦闘はなかなか楽しい。敵の種類も“ボム”や“モルボル”などシリーズお約束のモンスターなどで見た目も楽しく、そして美しく、状態異常を引き起こす敵が今までのシリーズより多目(に感じた)など手ごたえも中々だし、トラップが強力で1撃死したりするのも緊張感が維持できて良い。チェインシステムも場所を選んで稼ぐのが面白いし、それに見合うリターンもあってバランスが取れている。ボス戦もなかなか絶妙で、“瀕死”になって強化されるボスをいかに追い込んで倒すか、というのもたまらない。
……どれもこれも中盤までの話ですけどね、ええ(´Д`)でもボス戦だけは終盤まで面白かったかな。ラスボス以外(笑)
フィールド関連について
“宝箱の中身がランダム”って舐めてますよね?良いアイテムが出るまで世界中全ての宝箱を30回ずつ開けろとでも言うのでしょうか。いやだからね、ネトゲならそれでいいけどスタンドアロンのゲームでそれは単なる苦行でしかないから。あまつさえ平地に置いてある宝箱が難易度の高いダンジョン奥地の宝箱とリンクしてて、平地でゴミを拾った瞬間に最強武器(の一つ)が入手不可能になるってもうアボカドバナナですよ。
移動も死ぬほどかったるくてゲンナリ。せめて街中で“ダッシューズ”使えて移動速度2倍にできるとか、街中以外でも非戦闘時(たとえ敵が見えてても自動で剣を抜かない距離)はダッシュできるとかだと良かった。あとはテレポクリスタルなんて代物があるおかげでシリーズ伝統の飛空艇が存在価値低くなっちゃってるので、序盤の移動に不自由するのはRPGのお約束なのでテレポクリスタルなんて廃止しちゃって、序盤〜中盤までは定期航路の飛空艇で移動し中盤からはシュトラールでどこでも移動可能、ストーリー上シュトラールで行っちゃまずい場所は“ヤクト”という制限が設定上ちゃんと存在するのでそれを活用、で良いと思うんですけどどーでしょ。
クラン、モブについて
モブ討伐に絡んで人間模様が変化し、多くの場合問題が解決していく(モンスターを倒したという直接の利益以外でも)というストーリー回しの手法はなかなか良かった。でもこれ完全にサブシナリオで、トマト以外は一切倒さなくてもクリア可能なのが評価の分かれるところか。個人的にはサブシナリオならサブシナリオでもう少し“ご褒美”が豪華だと良かった。つまり本編以外に時間を掛けるだけのリターンが欲しいという事。戦闘についての項目でも書いたけど単純に遠回りしてザコを倒しただけではレベル的なメリットは殆どなく、強力なモブを倒してもそれ自体では多量の経験値が入るわけでもなし。LPもそう(強いモブはどーんと200LPぐらい入手できても良かったのでは)。「そのレベルでギリギリ倒せるモブを討伐したら、ご褒美に次のシナリオ上の拠点まで楽チンに進めるぐらいの武器が手に入る」というのが毎回でなくても良いのでもう少し欲しかった。ラスボスより強いモブなど、クリア後のお楽しみとして配置されているモブもそれはそれで良いのだけど、そいつらを倒して“世界最強”の称号を得た後に最強武器が手に入るってのは何か間違ってると思う……
キャラクターについて
ストーリーの項目でだいたい書いてしまったので簡潔に。
各キャラが個性的なので上手く全員を扱えていなかったのが残念でならない。特にパンネロは立ち位置が不明瞭。本来は「駄目主人公を励まし(ケツを叩き)、時に感情論からのド正論を吐き皆をはっとさせるヒロイン」であったはず。歌と踊りが得意という設定もすっかり忘れられているし。ラーサーをもっと誘惑するぐらいしても良かったのでは(笑)伏線の消化不良っぷりはFF6に通じるものがあるが、これも全ては松(ry
総括
色々文句はありますが、純粋にRPGとして見た場合の得点は80点というところでしょうか。ストーリー、ゲームバランスはもう少しどうにかして欲しかった所ですが、グラフィックなど“FFらしさ”でカバーできているのでまぁ及第点とします。

FF13が開発破棄されたなんて話も漏れ聞きますが、これ以上「ファイナルファンタジー」という名前に期待と重圧を掛けるのは止めたほうが良いのかもしれません。“売れる”事を義務付けず初心に帰って開発すればその限りではないのかもしれませんが、あまりに好き勝手やると映画でこけた前例がありますからなぁ……スクエニよりはむしろミストウォーカーに期待しておきましょうか。

最後に、参考までに個人的FFランキング(11は未プレイ、10-2は途中までなのでランキング外)
10>7≧8>6>4≧5>9>3>1>2
うーん、この中に12を入れるとしたら8と6の間ぐらいか?