TULLY’S COFFEE 物語 その4
彼女の「恋愛に興味ない」というセリフを真に受けたわけではないが、
しばらくは特にデートに誘ったりせずお店に通うだけの日々が続いた。
当然お店のカウンター越しでろくな会話ができるわけでもなく、
むしろ告白してかわされた小っ恥ずかしさがあるのであいさつすらぎこちなくなる。
「どうしたもんかねこの状況……」
店内でモカをすすりつつ、思わず口から愚痴がこぼれた。
「そういえば彼女、スターウォーズが好きだって言ってたわよ。」
突然後ろから声を掛けられコーヒーを噴き出しそうになりながら振り返ると
彼女とは別の店員さんが居た。
「デートにでも誘ってみたら?」
「なっ……んで俺にそんな事を言」
「彼女、あれだけ美人なのになーんか男っ気が無かったのよ。
てっきり色恋沙汰に興味ないのかと思ってたら、
貴方がお店に来るとあからさまに嬉しそうなのよね。
友達としてこれは見過ごせないわけよ。わかる?」
「ああ、はあ。」
「貴方も貴方よ。
この間チャンスだったんでしょ?なんで何もしないで帰しちゃったのよ。」
「いや、何もってちゃんと告h」
「とにかくね、古い考えかもしれないけどこーゆーのは男の子がリードすべきよ。
いまどき『暴漢から女の子を守って惚れられた』なんて馬鹿なシチュエーション妄想してないでしょ?」
「(しちゃ駄目か)ええ、まぁ。」
「彼女は明日お休みよ。予定も無いって言ってたわ。さぁどうする!」
「……デートに誘います。」
「それでこそ男の子!お姉さん応援するわよー♪」
いやどう見たって俺のほうが年上だと思うのだが、という言葉を飲み込み考える。
なんだか訳の分からないまま丸め込まれた気がするが
言ってる事が本当ならチャンスには違いない。
スターウォーズは実は既に見たんだがもう一度劇場に足を運びたいと思ってたのも確かだ。
明日は休日出勤の予定があったがどうしてもという仕事じゃないので休みは取れる。
映画でデートなんて定番コースもいい所だが別に定番が悪いなんて事はないし
彼女も好きなタイトルの映画なら話も弾むだろう。
……ここまで一気に考え席を立ち、カウンターへと向かう。
「あ、お帰りでs」
「明日デートしましょう」
「え?そんな急に、じゃなくてこんな場所で突然言われても……!」
彼女がさっきの店員を睨む。どうやら事情を察したようだ。
睨まれた当事者は何食わぬ顔で明後日の方向を見ているが。
「(はぁ)あとで連絡させていただきますので電話番号教えてください。」
僕も睨まれた。睨むというにはずいぶん笑顔に近いが。